「骨折は命を落とす原因になる」と言われても首をかしげる方は多いでしょう。もっとわかりやすく言うと、高齢者で骨粗しょう症がベースにあると転倒等で骨折しやすく(特に太ももの付け根(大腿骨近位部)や背骨腰骨(胸椎・腰椎))、すると安静をよぎなくされて寝たきりになります、そうすると全身の体力が低下して肺炎などの病気になる頻度があがり、その結果命を落とす結果になります。(下図参照)
目次
骨粗しょう症で起こりやすい骨折
骨粗しょう症で起こりやすい骨折の代表的なものは3つあります。中でも脊椎圧迫骨折と大腿骨近位部骨折は健康的な生活に重大な影響を与えます。
脊椎圧迫骨折
背骨の椎体という部分が押しつぶされる「圧迫骨折」。気づかないうちに折れたり、ちょっとした軽い動作で骨折する「いつの間にか骨折」と言われる骨折です。
背中が曲がったり、身長が低くなったりします。さらに悪いことは、圧迫骨折が1か所あると周囲の骨に負担がかかり再骨折を起こしやすいことです。そのリスクは圧迫骨折が1か所あるだけでも上がりますが、2か所あるとさらに高くなります。
大腿骨近位部骨折
太ももの骨の付け根がちょっとした衝撃で折れる骨折です。その9割は骨粗しょう症が原因と言われていて寝たきりになる事が多く、手術も必要になる事が多く、治療に長期間が必要になります。
寝たきりにならないためには骨粗しょう症の予防が急務です。
まずは骨密度検査を
まずは自分が骨粗しょう症であるかを確かめることが大事です。万一骨粗しょう症であったとしても早くわかれば対策も早く開始できます。将来的に薬治療を受けなくてもいいような一次予防が可能になります。治療が必要な方は半年に1回、治療がまだ必要でない方は年1回の検査がおすすめです。まだ日本には受けたことがない人が多くいますがこれは大切な検査です。欧米では大腿骨近位部骨折が減少傾向にあると言われていますが、これは検診受診率の高さが一つの要因です。日本ではすでに超高齢化社会に突入しています、これからの骨折を予防するためにも是非おすすめします。
現在、骨粗しょう症検査でスタンダードになっているのは当院にもある腰椎と大腿骨を測定するDXA法です。DXA法は精度の高い結果をうることができます。
いくつになっても骨は強くできる
骨量は一般的に、女性が40~50歳代、男性が50~60歳代あたりから低下します。骨は常に同じ状態ではなく、古くなると細胞によって食べられ新しい骨が作られるという新陳代謝を繰り返しています。1年間で全体の10~15%が生まれ変わり、5~6年ほどで全身の骨が置き換わると言われています。
何歳から骨の強化に取り組んでも手遅れではありません!
強い骨を作るだれでもできる簡単な運動
下肢や体幹を鍛える体操は色々ありますが、高齢者でもできるお勧めの運動がありました。
かかと落とし
大腿骨近位部を刺激する運動はあまりありませんが、これは外側から刺激する運動です。
かかとに加わる刺激が股関節まで響くように意識することが大切です。
注意点は、重度の骨粗しょう症の人や骨折して間もない人は、刺激が強すぎるとけがをしてはいけないので5回から始め、かかとを上げすぎないように、衝撃を和らげて行うようにしましょう。
スクワット
スクワットは下肢の筋肉を鍛える運動です。骨だけ鍛えても筋肉が弱ければ骨折しますし、逆に筋肉だけ鍛えても骨が弱くては骨折します。そのバランスが必要です。
下半身を鍛えることは寝たきり予防にもつながり、つまずいても持ちこたえることができ、転倒→骨折→寝たきりを断ち切ることができます。
おへそ引っ込み体操
圧迫骨折の予防に「おへそ引っ込み体操」がお勧めです。
腹筋は筋トレなどで鍛えなければ衰え易い。この体操はお腹から背中にかけての筋肉を刺激し、骨にストレスをかけることができる。単純ですが案外つらい運動で、地味ですが腹筋にしっかり効きます。
インターバル速歩
最後に屋外でおこなう運動を。
早歩きと通常の歩行を3分ずつ交互に繰り返すというものです。
早歩きで運動強度を上げることで骨に刺激を与え、かかと落としに似た様な効果があります。
骨を丈夫にして骨折を防ぎ、寝たきりを回避して健康寿命を延ばす。そのためにはまず骨密度測定をして自分の骨の現状を知り、その上で食事と運動で日常生活を見直すことが丈夫な骨作りの基本です。
いくつになっても骨を強くすることは可能ですから、整形外科受診され、一緒に検査や相談、さらには運動をしましょう。
(日本経済新聞社・中村幸男先生原稿参照)
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