変形性関節症osteoarthritis

変形性関節症

変形性関節症

節が変形していき、炎症を生じ、痛みが起こる病気です。荷重時に膝にかかる負荷に対し、クッションの役割をもつ関節軟骨や半月板に変性や摩耗が、加齢とともに生じてきます。この刺激により、滑膜が炎症を起こして痛みが生じたり、過剰な関節液が貯留したります。関節辺縁に骨棘が形成され、大腿骨と脛骨の間隙が狭くなってきます。軟骨の摩耗が進行すると軟骨は失われ、軟骨下骨が直接衝突するようになり、変形は進行していきます。加齢とともに軟骨の摩耗が進むことから、高齢者に多く、男性よりも女性に多く生じます。体重が重い人に多く、肥満はリスク要因です。高齢者の筋骨格系の疼痛の原因として高頻度にみられる疾患です。主な症状は、動作時痛、可動域制限です。炎症が強いと関節は腫脹してきます。動作時痛は、立ち上がり動作、階段昇降、長時間の立位、歩行時の疼痛です。可動域制限は、正座ができなくなり、しゃがみこみ動作が困難となり、まっすぐ伸ばすことができなくなってきます。関節の腫脹は、滑膜炎によって水が関節に水が貯まった状態になることもあります。

変形性関節症の治療

診断では、痛みの経過、部位、腫脹の有無など視診、触診から、X線検査で関節軟骨の摩耗の有無、骨の変形の程度を評価します。他の疾患を鑑別するために、MRI検査や関節液検査、血液検査を行うこともあります。治療は、症状や検査結果だけでなく、生活背景も考慮しながら、保存療法と手術療法を選択していきます。保存治療は、薬物療法や装具療法で痛みを軽減させて、下肢筋力訓練を含めたリハビリテーションで関節機能の回復を図っていきます。特に大腿四頭筋の筋力訓練が有効です。体重を減らしていくことも痛みを軽減する効果につながります。保存療法で症状の改善が得られない場合は、手術療法が必要になってきます。

リハビリテーション

温熱療法、筋力訓練、可動域訓練があります。

装具療法

サポーター、足底板、膝装具、T字杖などがあります。

薬物療法

塗り薬、貼り薬、内服薬、坐薬、関節内注射などがあります。まず消炎鎮痛剤を含んだ塗り薬や貼り薬を関節周囲に使用していきます。痛みが持続性となり、関節炎が増悪してきた場合は、消炎鎮痛剤を使用していきます。非ステロイド性消炎鎮痛薬、COX-2選択阻害薬、アセトアミノフェンなどが使用されます。

手術

半月板の症状が主症状で、関節の変形が軽度であれば、関節鏡視下手術を行うこともありますが、関節鏡視下手術だけでは症状がとれないような変形の場合は、骨切り術を行うこともあります。変形が進行している場合は、関節鏡視下手術や骨切り術では症状の改善に限界があり、人工膝関節置換術を行います。

どのような治療を選択するかは、膝の変形の程度、痛みの強さ、患者さんの年齢や活動性、仕事内容を含めた社会背景を考慮して、患者さん本人と家族とも相談しながら決めていきます。適切な治療方法を選択・判断していけるのは整形外科医です。膝の痛みを感じるようになったときは、整形外科医による診察を受けることが大切です。そこで医師と相談しながら、薬物療法や非薬物療法を組み合わせながら治療法を選択していくことをお勧めします。病期が進行して、激しい疼痛が持続するようになったときは、手術療法を考慮し、専門医療機関への受診を考慮していくことが必要になります。日本には、変形性膝関節症の患者さんが2,500万人もいると言われています。自覚症状がない人も多く、発症したからといって必ずしも痛みが伴うわけではありません。しかし、関節の変形は徐々に進行していき、それに伴って痛みも増していきます。膝に痛みを感じ始めたら、早めに専門医に診せて、予防や改善策に努めた方がいいでしょう。